新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、事業を休止し従業員を休業させた場合に助成される「雇用調整助成金」。
日経新聞の記事によると、利用はなかなか進んでいないようです。
理由の一つとして、助成金の申請に必要な書類が揃えられないということが挙げられるようです。
そこで今日は今からでも間に合うよう、雇用調整助成金の支給申請に必要な書類について解説します。
「雇用調整助成金」「緊急雇用安定助成金」の違いとは
まず押さえておきたいのは、これら二つの助成金の違いについてです。
これらは同じ厚生労働省のページに記載されていますが、同じ従業員について二つが併給できるわけではありません。
従来型の雇用安定助成金は、雇用保険の被保険者しか対象にしていませんでした。
しかしこの緊急事態の中、雇用保険に入らない短時間パートや昼間学生などについても保護の対象に拡大したのが「雇用調整助成金の特例」としての「緊急雇用安定助成金」です。
そもそも雇用保険被保険者がおらず、雇用保険の適用事業主となっていない会社で労働保険の適用事業所である会社や、雇用保険適用事業主に雇用される雇用保険に加入していないパートやアルバイトなどの休業手当は「緊急雇用安定助成金」の対象になり、申請様式は別々ですが雇用調整助成金同様の助成が受けられます。
なお本来雇用保険に加入すべき人(週20時間を超える雇用契約を締結している人)が、手続きのミス等により雇用保険に加入していなかった場合、改めて雇用保険に加入の手続きを取って雇用調整助成金の支給申請を行うことになります。
雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の支給申請書類は別々ですが、添付書類はほぼ共通となっています。
申請のため事前に準備できる書類は?
まずは、出勤簿や賃金台帳、労働条件通知書や就業規則(賃金規定)など、法律で定められている書類がきっちりと作成、保管されているか確認しましょう。
これらの書類は、休業実態や賃金の支払実績を労働局が確認するために必要になります。
ただし、現状賃金台帳を作成していない、法定の項目を記載していない、そもそも就業規則がない場合でも、助成金の申請を諦めなくても大丈夫です。
6月30日まではコロナ特例が適用され、賃金台帳がない場合は給与明細であったり、出勤簿がない場合は手書きのシフト表でもOKという取扱がされます。また就業規則は常時労働者が10名いなければ作成の義務はなく、仮に労働者が10人以上いて就業規則がない場合は、労働者毎に所定労働日を示した労働条件明示書を用意し営業日が確認できるカレンダーなどを用意しておきましょう。
(もし常時労働者が10人以上いるにもかかわらず就業規則がないという場合は、「年間休日カレンダー」などで対応できる可能性があります。しかし管轄の労働局により扱いが違う可能性がありますので、必ず事前に労働局にご相談ください)
最低限、労働条件通知書や就業規則、営業カレンダーやシフト表などに示された所定労働日のうちいつ出勤していつ休業したのか、または教育訓練を実施したのかその履歴がきっちり客観的に確認できるような状態にしておくことが必要です。
また給与明細や賃金台帳についても、労働の対価として支払われた部分と、休業手当として支払われた部分が明確に区別されている必要が本来あるのですが、コロナの特例の中では「休業して支払われる額=通常の賃金」の場合、すなわち通常の賃金の100%の休業手当を支払う場合は、その100%の通常の賃金が支払われることが確認できればよいとなっています。
ただし通常の賃金の60%や80%の休業手当を支払う場合には、基本給と別に区別して「何時間、何日分の休業の対象として、何円分の休業手当が支払われたか」が客観的にわかるようにしておきましょう。
会社規模を確認するために、労働者名簿や労働者一覧表も必要です。
中小企業かそれ以外かで、助成額が異なりますので、既存の労働者名簿などで企業規模を証明します。
(こちらは通常期間中は法人の登記簿謄本など公的書類が必要でしたが、コロナ特例中は不要となっています)
また、売り上げの減少を証明する書類も重要です。
雇用調整助成金の要件として、昨年同月比5%以上打ち上げが落ちている実態が必要です。
その証明として、例えば会社で作成している「売上簿」や会計システム上の記録など、比較月とその前年同月の分を用意しておきましょう。
(本来は「月次損益計算書」などが必要でした。特例中は既存の書類でOKとなっています)
また、これは「雇用調整助成金」だけですが、去年提出した労働保険年度更新申告書の控えも用意しておいた方がよいでしょう。
添付する必要はなくなっているのですが、助成金申請時、昨年の年度更新で算出した概算の雇用保険被保険者に支払う総賃金額をもとに助成額を算出するからです。
労働局が審査する場合は、前年の年度更新のシステム上のデータと、申告された数字があっているか突合させて審査することになります。助成金の基礎となる支払賃金額がむやみに高額に申告されないようにです。
これらの書類のほか、労働局が審査の過程で求める書類を提出することがあります。
また余談ですが、法令上は労働条件明示書や賃金台帳、労働者名簿などは必ず作成する義務があります。今回助成金の申請にもし代用できるものがあったとしても、後々のことを考えるとこれらは社労士などの助言を受けてきっちり作成、保管しておくことをお勧めします。
申請書類等の様式はこちらで
上記の書類のほか、計画届や協定届、その他申請書類などは会社印や労働者印を押印のうえ提出します。
申請書類はこちらでダウンロードできます。
助成金の申請から支払までには、通常の半分の約1か月に短縮する予定とされています。
なるべく早く受け取ることができるよう、準備できる書類は今のうちにそろえておきましょう。
※弊事務所では申請代行の依頼を承っていますが、それ以外で個別に助成金についてご質問にお答えすることはできません。助成金については労働局の職業対策課までお問い合わせください。
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