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執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

外国人労働者の入社手続に「通称名」は使用できるか

近年、人手不足により外国人労働者を積極的に採用しようという企業が増えてきました。


弊事務所のお取引先さまからも、外国人労働者の採用・入社手続きについて質問を受けることが増えてきたのですが、今回は「外国人労働者の雇用に関する事務について『通称名』を使用できるか」という点について解説いたします。




通称名とは

外国人の方が日本で社会生活をする上で日常的に使用している本国名以外の「呼称」を住民票に記載することが必要と認められる場合は、通称として住民票やマイナンバーカード等に記載することができます。

これを通称名と呼びます。


通称名を登録するには、ご本人が市役所に行き、マイナンバーカードや2点以上の通称にかかる証明書類(社員証や公的機関の発行した通称名が記載された書類)を提出し、申請を行うことが必要です。


通称名は住民票やマイナンバーカードに記載されますが、在留カードには記載されません。


また金融機関によっては、在留カードや住民票などの本人確認書類を提出することで通称名での口座開設も可能となっているようです。





外国人労働者の雇用事務に通称名を使用できるか

外国人労働者を雇用した場合、健康保険・厚生年金保険の資格取得手続や、雇用保険被保険者手続、外国人雇用状況届出書の提出などの手続を行うことになります。

これらの公的な保険の加入手続に、通称名は使用できるのでしょうか。



①健康保険・厚生年金保険の資格取得手続

健康保険証は身分証明書にもなるため、住民票に通称名の登録がないと通称名での資格取得ができません。

逆に言うと、住民票に通称名の登録が済んでいる外国人の方であれば、通称名で健康保険証を作成することが可能です。


外国人労働者の方から通称名での加入希望がありましたら、マイナンバーカードや住民票で通称名を確認するようにしてください。



②雇用保険資格取得手続

雇用保険の被保険者資格手続は、健康保険・厚生年金保険ほどの厳格性は求められず、通称名の登録の有無にかかわらず通称名は使用できるようです(船橋ハローワーク)。

ただし、前職がありすでに雇用保険被保険者番号をお持ちの方であれば、実名での雇用保険被保険者番号と、通称名での雇用保険被保険者番号の二重採番とならないよう、過去の雇用保険被保険者証をよく確認する必要があります。

雇用保険番号が2つになることで、異なる雇用保険被保険者番号での雇用保険の加入履歴が通算されなくなってしまい、雇用保険給付に影響が出ることがあります。


また今回は詳しくは触れませんが、外国人労働者の方を雇用した場合はかならずハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります。

外国人労働者の方から事前に必ず在留カードの提出を受け在留資格や在留期限を確認し、外国人雇用状況届出書を提出するとともに資格外の労働に従事させることのないよう十分注意してください。


外国人労働者の方が離職した場合も、同様にハローワークに「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。



③給与支払報告書の提出

外国人労働者の給与支払報告書を市町村に提出する場合は、住民票の通称の記載があれば通称名で提出することも可能です(八千代市役所)。ただし通称名での提出ですと本人データとの照合作業が発生するため、生年月日等に誤りがないかどうか注意して提出するようにしてください。




④社内での呼称を通称名とする場合

社内での呼び名を通称名にしたい場合は、公的機関に提出する書類は特にありませんので、必ずしも住民票で通称名の登録がされているかまでは確認する必要はありません。


外国人労働者に限らず、社内で通称名使用を認めるケース(結婚前の旧制を名乗る等)はよくあることで、通称名の使用範囲、届出方法、通称名を認めるケース等を定めたうえで、規程に則って運用されるとよいでしょう。




外国人労働者の雇用にはより一層の注意を

今回は外国人労働者の通称名使用について解説をしましたが、前述のとおり事業主は外国人の雇用状況についてハローワークに届け出を行わなければなりません。

また在留期限を超過した外国人労働者を雇用した事業主は、不法就労助長罪に当たり罰せられる可能性がありますので、外国人労働者の方を採用する場合はより一層の注意をもって受け入れの体制をつくってくださいね。



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