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執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

正社員と非正規社員の待遇格差が争われた2つの訴訟

正社員と非正規社員の待遇格差が争われた2つの訴訟

2018年6月1日、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の賃金格差の合理性が争われていた2つの裁判(ハマキョウレックス事件、長沢運輸事件)の最高裁判決が言い渡されました。

​まずは2つの事件の背景と、今回の最高裁の判決の要旨を確認しておきます。

2つの訴訟は、原告が非正規雇用労働者なのか、「定年後再雇用された」非正規雇用労働者なのかの違いから、判断に大きな差があることが見て取れます。

長沢運輸事件において、定年後再雇用されている非正規雇用労働者に対する待遇格差については、最高裁は

・定年後再雇用の嘱託社員と正社員では賃金体系が異なること

・定年時に退職金を支払っていること

・年金受給前は調整給を支払っていること

・年収が退職前の79%程度になるよう配慮されていること

を考慮し、定年後再雇用者と正規社員の待遇差は不合理とは言えないと認定しています。

また過去の定年後再雇用者の待遇をめぐる判例においては、定年後に月収が75%減少した賃金格差に合理性はないとしたもの(九州惣菜事件)や、定年後再雇用者の職務として清掃係を命じる内容は、再雇用制度の実質を失わせるとして高年齢雇用安定法違反であるとしたもの(トヨタ自動車事件)などがあります。




「同一労働同一賃金」への備えが必要

これらの判決を受け、企業は非正規雇用労働者の待遇について対応が迫られます。

昨年には「同一労働同一賃金ガイドライン案」が厚生労働省によって公表され、

またパートタイム労働法の改正案においては、「労働者から求めがあれば待遇差の内容、理由について説明する義務」について規定が置かれる予定です。

とはいえ、何でもかんでも「待遇差が違法」なのではなく、

「職務の内容や、職務の内容は配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して」、

​それが不合理であるかどうかが判断されるということに注意してください。




具体的な対策とは

まずは、パートなどの非正規雇用労働者と正規雇用労働者の職務内容や責任の程度、期待する役割、将来的な人事異動や昇格の有無の比較表を作成することをおすすめします。

前述のとおり、「同一労働同一賃金」は職務の内容や職務内容・配置の変更の範囲、その他事情の客観的・具体的な実態に照らし合わせて、不合理であってはならないとするものです。


そのため非正規と正規の職務内容や配置変更の範囲、責任の程度、将来的な昇格の程度等をできる限り明確にしておく必要があります。非正規雇用労働者から待遇差について説明を求められた際は、当該比較表を用いて待遇差の理由を説明します。


なお、比較表があっても実態はそれを無視し、正規社員並みの業務内容や責任を負わせている場合はその待遇差が不合理と認められてしまいかねませんのでご注意ください。


また、出来れば前述の比較表を基に、職務内容や責任の程度、配置変更の範囲などの差を考慮した賃金テーブルを作成しておくことをおすすめします。



弊事務所では、貴社に在籍する労働者の実際の職務内容や責任範囲等を聞き取り、賃金原資や現在の賃金水準との比較検証を行い、貴社にあった​職務等級表や賃金テーブルの作成をお手伝いします。


​また、非正規雇用労働者に対して賃金規程を導入したり賃金の増額を行った際は、キャリアアップ助成金の対象になる可能性もありますので、助成金の申請も合わせて弊事務所がお手伝いさせていただきます。


​同一労働同一賃金の実現・新たな賃金制度を構築したい会社様はぜひお問い合わせくださいね。

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