入社してひと月立たずして従業員が退職してしまうケースがあります。
社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)は、資格を取得したその月から、喪失日の属する月の前月までが徴収の対象となりますが、入社月と退職月が同月だった場合は、
どのように保険料を処理すればいいのでしょうか。
入社月に退職した場合は、ひと月分の社会保険料の納付が必要
社会保険の資格を取得した月にその資格を喪失した場合は、保険料の納付が必要になります。
ですから従業員負担分の社会保険料は退職時に給与から控除し、会社が会社負担分と従業員負担分を翌月末までに納付することとなります。
元従業員が、退職後同月に年金制度に加入した場合は、厚生年金保険料が還付される
ただし、同月内に退職した元従業員が、退職後、同月内に転職をして厚生年金保険に加入したり、
又は国民年金の第1号被保険者や第3号被保険者の資格を取得した場合は、
御社で納付した厚生年金保険料の納付は不要となります。
【例】
10月1日 A社に入社(10月1日厚生年金保険の資格取得)
↓
10月15日 A社を退職(10月16日厚生年金保険の資格喪失)
※1か月分の社会保険料を10月分給与から徴収し、翌月10日までに納付する。
↓
10月20日 転職によりB社に入社(10月20日厚生年金保険の資格取得)
※B社にて、10月分給与から10月分の社会保険料が徴収され、10月分保険料を翌月10日までに納付する。
↓
結果的に、10月分の保険料が重複して納付されることになった。
上記のようなケースでは、この退職した元従業員にかかる10月分の保険料が重複して納付されたことになります。
ですので、後日年金事務所からA社あてに、厚生年金保険料の還付についてのお知らせが送付されます。
このお知らせは、対象の従業員が退職してから数か月後に送付されるようなので、
お知らせを見た会社は何事かと思うかもしれませんね。
10月分の厚生年金保険料の還付は、全額A社宛てに直接行われますから、
ご本人が負担した半分の保険料は、退職した元従業員の方にお返しする処理が発生します。
「それなら同月に退職した場合は、初めから厚生年金保険料を控除しないでいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、退職後の従業員が同月内に国外に転居するなどして、年金制度の資格を取得しなかった場合は厚生年金保険料の還付は行われません。
退職後の従業員がどのように動くかなんて、会社は知る由もありませんから
「厚生年金保険料の取り漏れ」を防ぐためにも、入社月と退職月が同月の場合は
やはり厚生年金保険料をいったんは給与から徴収しておくのが無難かと思います。
健康保険料は、保険料の還付は行われない
これまで厚生年金保険料の還付について解説してきましたが、
健康保険料については保険料の納付が重複したとしても還付は行われませんので、ご注意ください。
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