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執筆者の写真藥井遥(社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級FP)

「特別手当」は社会保険上の報酬か賞与か

更新日:10月12日

実際にあったケースですが、

非正規労働者には賞与がない代わりに、年に2回「特別手当」という一時金を、月額給与に上乗せする形で支払っている会社から、賞与支払届の対象とすべきかどうかご相談を受けました。



【具体的な状況】

・雇用契約書には賞与の支払いなしとされている

・就業規則にも特別手当の記載がない

・賞与のない方に、賞与のかわりとして月給額に計上して支払われている

・金額は年に2回、1万~数万程度で人により違いがある(賞与よりは少額)



このようなケースでは、特別手当は報酬の中に算入するのか、別途賞与支払届を提出して保険料を算定しなければならないのか、どちらなのでしょうか。





標準報酬月額の対象となる報酬とは


康保険法および厚生年金保険法上、標準報酬月額の対象となる報酬とは、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを含んでいます。


恩恵的に支給される結婚祝金、死亡弔慰金、病気見舞金、災害見舞金などは、標準報酬月額の対象から外すことができます。



報酬に該当する場合

「報酬」に該当すれば標準報酬月額に算入すべき報酬になりますので、資格取得時の報酬の算定や、定時改定や随時改定の際の報酬に計上しなければなりません。



一方、報酬のうち臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与(標準賞与額の対象となります)などは、標準報酬月額に含まず、賞与額に対して別途保険料が算定されることになっています。



【報酬とは】
①労働者が自己の労働を提供し、その対償として受けるものであること
②常時又は 定期に受け、労働者の生計に充てられるものであること
③給与規定、賃金協約等の諸規定によって年間を通じ四回以上の支給されることが客観的に定められていること



【賞与とは】
報酬のうち、臨時に受けるものおよび3か月を超える期間ごとに支給されるもの。
ただし、この3回判定については以下の点を踏まえて判定します。
① 名称は異なつても同一性質を有すると認められるもの毎に判別する。
② 例外的に賞与が分割支給された場合は、分割分をまとめて一回として算定 する。 
③ 当該年に限り支給されたことが明らかな賞与については、支給回数に算入しないこと。



年に2回支給される「特別手当」は賞与か報酬か


今回のケースに戻ります。



金額が1万円から数万円程度という人も多く、感覚的に「賞与」というと違和感があるがために判断を迷ってしまいそうになりますが、

上記の報酬の基準に当てはめてみると、特別手当は「年に2回のみ支給される」「臨時に受け取るものの性質が強い」ことより、賞与支払届の対象となる賞与に該当するものと考えられます。


なお仮に、この特別手当が「大入り袋」のような名目で会社の任意恩恵的に支払われたような場合は、

そもそも労働の対価とは言えず、標準報酬月額の対象となる報酬にも、賞与支払届の対象になる賞与にも該当しないことになります。


したがって、今回のケースにおいては、非正規従業員に対して賞与に代わって月額給与に上乗せで支給される特別手当であっても、標準報酬月額の算定対象からは切り分け、別途特別手当にかかる保険料を控除した上、賞与支払届の提出が必要と考えられます。





名称にとらわれず、支払い方や性質で判断が必要


このように、「〇〇手当」という名称がついていれば、つい月額給与の一部として社会保険料を計算してしまいそうになりますが、

上記で見てきた通り、月額報酬に該当するか、賞与に該当するのかはその支払方法や性質で判断する必要があります。


迷われた場合は、年金事務所や社会保険労務士にご確認くださいね。




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