ここ数年、社会環境が激変する中で時代の要請に応えるべく、書店の店頭に新規事業に関する幾多の書籍が並ぶようになりました。いずれも著者の知見と経験に裏打ちされたノウハウが散りばめられた秀逸本であり、どれを選んで読んだらいいのかと戸惑うことが多々あります。
そのような中で中小企業診断士としての私自身の経験を踏まえ、事業の再構築や新規事業の立ち上げ(以下、事業再構築等)を検討・準備する際に有用と思われるフレームワークやメソッドについて考えてみたいと思います。
初回は、事業再構築等の検討・準備において、マイルストーンとして活用したい「フィット・ジャーニー(Fit Journey)」というフレームワークをご紹介します。
多くの方がフィット・ジャーニーという言葉を初めて目にされたのではないかと思いますが、図示すると次のような流れになります。
横文字が多く並んでしまいましたが、フィットは適合している、ジャーニーは旅という意味です。
まず、カスタマー・プロブレム・フィット(Customer Problem Fit)フェーズでは、顧客と問題・課題がフィットしているのか。つまり、自分達が顧客の問題・課題と想定している事柄は、顧客が抱えている問題・課題と本当に適合しているのかを検証していきます。
次に、プロブレム・ソリューション・フィット(Problem Solution Fit)フェーズでは、顧客の問題・課題とその解決策がフィットしているのか。即ち、自分達が考案した解決策は本当に顧客の問題・課題に対する解決策となっているのかを検証していきます。
また、ソリューション・プロダクト・フィット(Solution Product Fit)フェーズでは、その解決策と製品・サービスがフィットしているのか。本当に自分達がその解決策を製品・サービスとして実装できているのかを検証していきます。
そして、プロダクト・マーケット・フィット(Product Market Fit)フェーズでは、製品・サービスが市場とフィットしているのか。実際に自分達が実装した製品・サービスは市場(顧客)に受け入れられているのかを検証していきます。
さらに、マーケット・スケール・フィット(Market Scale Fit)フェーズでは、リリースした製品・サービスの市場はスケール・アップとフィットするのか。最終段階として、上市した製品・サービスは市場で適正な収益をあげる事業へとスケール・アップすることができるのかを検証していくことになります。
いずれのフェーズにもフィットという言葉が入っており、フィット感を確かめながら次のフェーズへと進んでいく。つまり、フィットを追い求めながらフェーズを進めていく状況が、フィットを求めて旅する姿に重なることからフィット・ジャーニーと呼んでいます。
次月では、このフィット・ジャーニーのフレームワークを使って、私がこれまでに経験・見聞してきた事業再構築や新規事業立ち上げの失敗事例について考えてみたいと思います。
(次月へ続く)
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